2009年12月21日月曜日

山でご飯(3):アルミ缶ストーブと予行演習

001

 

山でご飯を食べるにあたり、家の中で予行演習を行う。

環境の整った家の中でできないことは屋外、まして山の中では、成功しない。ここでは、スキルアップとしてストーブの自作とそれを使った調理の実習を行う。

右は使用したセット。

自作アルコールストーブ

アルミ缶ストーブもしくはペプシ缶ストーブと呼ばれているものを作製した。目的は、ストーブの基礎を学習し、既存の装備品をより効率的に運用する方法を模索すること。アルミ缶ストーブの主力化による装備の軽量化などは目的としていない。

アルミ缶ストーブを作製するに当たり、以下のサイトを参考にした。

http://zenstoves.net/

リンク先のHow Stoves Workを読めば、ストーブの基礎を学ぶことができる。

燃焼実験

390mlの熱湯を得るために最適化する。なお、湯の量はカップヌードルを作るのに必要な湯の量を基準とした。

湯を効率よく沸かすには、炎の高温部分を利用する。風防およびアルミ反射を利用して熱を逃がさない、などが考えられる。

炎の部位

image 炎の高さとコッフェルの底面に当たる炎の部位により沸騰時間に猛烈な差がでることが確かめられた。 高さ0cmでは10分でも沸騰しないが、高さ5cm程度(炎の高さの8割程度)の位置のとき最も早く沸騰し5分で湯が沸いた。

風防およびアルミによる赤外線反射

アルコールストーブではわずかでも風があると、湯が沸かせなかった。風防により風除けを行うと、なんとか沸かせる。一方アルミを使った赤外線反射は差異が認められない。したがって風防はアルミなど赤外線反射にこだわる必要はない。

まとめ

上記結果より、自作アルコールストーブでは十分な高さの風防とゴトク(炎の高さの8割程度の位置になべ底がくるもの)が必要と確認できた。これはフィールドでのガス調理の経験とよく符合する。

  • 風除けを意識する
  • 適切な高さのゴトクと炎を全面に受けられる広さのなべ底を用意する

調理実習(おやつパスタ編)

実際に何か調理してみることにした。アルコールストーブの不安定な弱い火力でも難しくない、簡単に火が通る早ゆでパスタを使ったおやつを一品作る。

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自作のペプシ缶ゼロのアルコールストーブに60mlの燃料用アルコールを注いで点火。

コッフェルにはたっぷり水を入れてある。6分程度で沸騰し始めた。

 

 

005

手で半分に折ったパスタをバラバラと投入して様子見。しっかり沸騰している。

写真を見ればわかるようにこのセットは背が高すぎる。転倒・やけどの危険があるため、屋外で実際にこのセットで調理はあり得ない。

何らかの理由で、この様なセットを使わざるえないときは、転倒事故を防ぐ対策が必要と思われる。

さて、すぐパスタに火が通るので、フォークを使いパスタを湯からあげる。そのままだとパスタがベタベタひっつくので暖かいうちにタップリマヨネーズをかけてかきまぜる。

007 最後に永谷園のお茶漬けのもとを振りかけて、おやつ完成。美味しゅうございました。

アルコールストーブで作ると10分以上かかるが、ガス缶を使えば5分でできる簡単おやつ。マヨネーズは高カロリーなので、お弁当用の小さい15gパック一個で一気に100kcalもとれる。(おもに油でだけど)

食べ物 カロリー 雑感
お茶漬けマヨ パスタ 470kcal 簡単・美味い。マヨ3パックとサラスパ半分で500kcal位。15gパックのマヨネーズでカロリーをブーストできる。
茹で汁 コーンスープ 80kcal パスタの茹で汁は油汚れを落とすのに便利。掃除用に少し残して、残りはスープの素を溶かして飲んじゃう。
魚肉ソーセージ 100kcal タンパク質万歳。重いがコンビニに寄ったついでについつい買ってしまう。上の二つじゃタンパク質が足りないので、こういった小物で補うべき。

500~700kcal程度しかないので、長期や冬のメニューには向かない。

2009年12月8日火曜日

ビバーク考(番外):オールウェザーブランケットの使い方(ビバークで凍えないためのetc)

オールウェザーブランケットの使い方

all-weather 003 オールウェザーブランケット、もしくはエマージェンシーブランケットは、使い方を正しく理解しなければならない。非常時に効果的に使うためにはどうすればよいか記述する。

右は、愛用のオールウェザーブランケット。使いきりのエマージェンシーブランケットと異なり、繰り返し使用できるが嵩張るのが欠点。

基本的な使い方

服を着れるだけ着る。お尻の下にザックの中身を敷き、座る。空にしたザックは、足を突っ込む。どこかにもたれかかるなら空にしたザックは背負って、背中の断熱に使ってもいい。最後に銀面を自分の側にむけたオールウェザーブランケットにしっかり包まる。

最高の結果を得るためのポイントは以下の通り。

  • 地面に対しての断熱を最優先に考える。地面に直接座ってはならないし、寝そべるなどは論外。
  • オールウェザーブランケットの銀面は自分側にして使う。

どの程度の効果があるのか?

うたい文句を信じるならば、オールウェザーブランケットは熱放射を80%以上反射させる効果がある。体からの損失熱の80%ではない点に注意すること。(Engineered to reflect and retain over 80% of radiated body heat,...原文の単語に注意!entire body heatではない)

簡単に言えば、体から失われる熱は以下の3つの要素の総和となる。

損失熱=熱放射+熱伝導+熱伝達(対流)

要するにオールウェザーブランケットでは、熱伝導や熱伝達により失われる熱はほとんど防げない。

オールウェザーブランケットを効果的に使うには、熱伝導および熱伝達の要素を最小にすればよい。地面に触れない(熱伝導阻止)、しっかり着こみ風に当たらない(熱伝達阻止)の2点を徹底すること。

オールウェザーブランケットやエマージェンシーブランケットに対して効果を疑問視する人もいる。以下に、オールウェザーブランケットが具体的にどの程度の効果をもつか概算した結果を占めす。

人体モデル

身長172 cm、体重 63kg (およそ標準体型の日本人男性平均値)。体表面積sは s = 0.007184 × 体重^{0.425} × 身長^{0.725}より、1.745196m^2とする。

環境

仮に全裸だったとして体表面の平均体温を34度とし、人体放射率を0.98する。また環境温度は24℃とし放射率0.95と仮定する。

放射熱

シュテファン=ボルツマンの法則から、放射される熱量P=放射率×表面積×シュテファン=ボルツマン定数×絶対温度^4となるため、人体から放射される熱量Pは、0.98×1.745196×5.67E-08×(34+273.15)^4=863.09J/sとなる。同様に環境から放射される熱量P'は0.95×1.745196×5.67E-08×(24+273.15)^4=732.91J/sとなる。

反射は値として小さいのでここでは無視する。P-P'より、概ね130.17J/sの体温が逃げる計算になる。もし生産熱と損失熱が平衡しているならば、1時間当たり112.0kcal/hのカロリーを失っている計算になる。人体比熱はおおよそ0.83であるから、体重63kgのこの人物の体温は、放射熱で約2.14℃/hの勢いで冷めていく計算になる。(生産熱はこれに逆らって体温を維持する)

オールウェザーブランケットの導入

周囲環境にオールウェザーブランケットを導入する。環境温度24℃で放射率0.2、反射率0.8と仮定する。

環境の放射率0.2について同様に計算すると放射熱P''=154.30J/s、さらに今度は反射を無視できないので、人体からの放射熱Pを反射した熱量RはR=人体放射熱量P×反射率= 863.09 × 0.8 = 690.4J/s。よってオールウェザーブランケットからの総放射熱量Prは放射熱P''と反射熱Rの総和になる。したがってPr=844.7J/sとなる。

熱放射により逃げる体温は、P-Prより21.40J/sとなる。つまり18.4kcal/h程度の損失といえる。体温低下に換算すると0.35℃/h程度になる。

まとめ

オールウェザーブランケット有り/無しで見ると、このケースでは一時間当たり93.6kcal/h程の差となる。これは、熱伝達、熱伝導の値が十分に小さければ無視できない量の保温効果だといえる。

逆にいえば、熱伝達や熱伝導による損失が大きい場合はオールウェザーブランケットの効果は相対的に小さくなる。そして、フィールドでは多くの場合、熱伝導や熱伝達による損失の方が大きい。そのため、オールウェザーブランケットやエマージェンシーブランケットは漫然と利用しても効果を感じにくい装備となっている。

ビバークで凍えないためには・・・

OK。ここからは数式のことなんか忘れよう。大事なのは、山で実際に何をすべきか忘れない事だから。下の3つの失わない努力を常に心がけること。

熱伝導によって体温を失わない努力

地面に直接寝てみよう。imageこの場合、あっという間に地面に熱を奪われて凍える。(熱伝導による熱損失)

地面に直接寝るのはダメ。寝るなら断熱用のマットを引いて寝る。これが鉄則。

image 「フォーストビバークでマットなんか持ってない!」そういう時も地面に対して常に断熱を意識する。たとえば寝ずに座る。接地面積を減らせば熱伝導で奪われる熱量は激減する。

imageこの場合もお尻の下に、着れない荷物は全部敷いて地面に対して断熱。何かにもたれるときはザックを背中に当てて断熱するといい。他にも、枯れ葉や小枝を集めて断熱マットもどきにできる。(夏場は虫にたかられる覚悟がいる・・・)

熱伝達(対流)によって体温を失わない努力

冷たい空気に触れると、空気が暖まりこんな感じに対流する。

imageこの場合、体温は空気に奪われてしまう。空気の流速が早いほど体温を急速に奪われる(対流による熱損失)

この場合、風に当たらないようにし、着られるだけ着る。

image

着こむときは、露出部分を可能な限り減らすこと。顔面、首、手を露出させない。また肩は体温を逃がしやすい。タオルなどでここをしっかり覆う。ここのサイト中段の図16に注目。衣服の肩の部分の温度が高いことがわかる。衣服が肌にしっかりあたる部分は熱が服に伝わりやすいため、熱を逃がしてしまう。タオルなど掛けて熱を逃がしにくくする工夫をすること。

なお、どこにももたれないときは、空にしたザックに足を突っ込んでおけば、足元はかなり暖かい。

熱放射によって体温を失わない努力

たとえ真空中に放り出されたとしても・・・・

image 体温は電磁波(輻射熱)となって逃げていく。(熱放射による熱損失)

この場合、アルミシートなど電磁波を反射する素材で囲う。

image

反射した電磁波が自分に戻ってくるように工夫すること。(ぐるり体を包むなど)

オールウェザーブランケットは地面に敷くとただのレジャーシートと変らない点に注意。熱を反射するわけではなく電磁波を反射するだけなので、反射した電磁波が自分に戻ってくるように配置しなければ無意味となる。

imageテントウォールを暖めても多少は効果があるかもしれないが、明らかに非効率なので、この場合は敷くより包まるべき。

最後に

ここまで見てきたようにオールウェザーブランケットが十分な効果を発揮するのは、3つの熱損失の要素の内、放射熱による損失だけだ。ビバークで凍えないためには、熱伝導、熱伝達、熱放射、すべてに隙がない対策が重要になる。

最後におまけとして。「オールウェザーブランケットの使い方」というからには、保温以外の使い方も挙げておこう。

日よけ(タープ)

銀面を熱源(太陽やたき火)に向けて裏側に回り込むと涼しい (熱源からの輻射熱をアルミが反射するため)。 グロメットを利用してタープ代わりに使うときは銀面を空に向けて張った方が涼しい。

日向で、「銀面を上にして包まったとき」と「銀面を下にして包まったとき」の温度の違いを実験してみると違いがわかる。

グランドシート

かなり丈夫なのでグランドシート代わりに使える。この場合は電磁波を反射する効果はないので、保温には全く使えない。(時々勘違いしている人がいるが、ただ地面との間に敷くだけで熱を反射するなんてことは、ありえないのでだまされないように)

雪洞掘りに

雪を掘りだして運ぶ時のソリ代わりに。

緊急時の合図に

ヘリに合図する場合に、目立つ銀面が使える・・・ハズ。ヘリに救助を求めるときは、体の上で銀面が目立つよう大きく円を描いて回す。ヘリから気付いて救助に向かってきたら、体の横で上下に振ればOK。

2009年9月27日日曜日

冬山考(1):体感温度と凍傷

冬季、気温が零下を下回るようになると凍傷を負う可能性が出てくる。ここでは凍傷の基礎知識を述べる。

凍傷とは

低温な環境にさらされると、人間は、皮下の血管が収縮させ、血液による体表への熱移動を減少させて中枢体温を維持する。中枢は守られる一方で、血流量が減った体表の温度は維持が困難になる。そのため、低温に長時間暴露され、極端に体表面温度が低下すると凍結が始まる。この凍結個所が凍傷となる。

軽度の凍傷は治癒可能だが、重度の凍傷は非可逆的破壊であり、凍傷個所は切断する必要が出てくる。

体感温度と凍傷

体感温度と凍傷の発生はよく相関する。したがって、環境の体感温度を正しく把握することが凍傷防止の第一歩となる。

wind-chill

体感温度は、外気温および風速から導かれる。上のグラフは、乾燥時の体感温度を示している。 なおこの体感温度の算出はWCT indexに基づく。

体感温度と凍傷の危険性は下の表で示す関係にある。また、体感温度が同じ場合は風速が速いほど凍傷の危険性が高まる。

体感温度凍傷の危険性対応
0~ -9極低防寒着を着用。寒さを感じなければ停止して短い休息をとってよい。停止した場合は、低体温症注意。
-10~ -27重ね着など工夫。可能な限り停止せずゆっくり運動を続ける。
-28~ -39中(10-30分程度で受傷)バラクラバなど着用。皮膚の暴露禁止。
停止せずゆっくり運動を続ける。定期的に凍傷になっていないか確認。
-40~ -47高(5-10分程度で受傷)皮膚の暴露禁止。重ね着など駆使しより高いレベルで防寒。停止せずゆっくり運動を続ける。頻繁に凍傷になっていないか確認。可能な限り風を避ける。
-48~ -54極高(2-5分程度で受傷)最高レベルの防寒。停止せず運動を続ける。すみやかに暖かい屋内への退避。
-55~論外(2分以内に受傷)屋外で活動してはならない。この事態に突入しないようあらかじめ天気に気を配り全力で回避する。

行動方針

山行中の行動の目安となるよう、体感温度と凍傷の危険、および強風の危険を一つにまとめたものが下の図となる。

wild-chill_action

山岳地帯の風速は地表よりも早いことが多いため、ふもとの天気の風速よりやや大きめに見積もること。稜線に出る場合はより悲観的に見積もる。

まとめ

  • 予想される最低気温および風速から体感温度を予測する
  • 体感温度より、防寒具の選択と行動に反映させる

2009年9月26日土曜日

山でご飯(2):基本事項

093

山でご飯を摂るにあたって基本的な事柄を記述する。

右は、縦走中、山小屋そばのベンチで作ったフリーズドライの雑炊とインスタントコンソメスープ。

スキットルの中身はバーボン。

 

山ご飯の基本

以下の事柄を踏まえて計画すること

  • エネルギー補給としてのご飯 : 行動不能に陥らないためにご飯の栄養価を評価する。長期縦走でなければ基本的に炭水化物とカロリーだけに注目してもいい。
  • ご飯作成にかかる資源 : ご飯を作るにあたって、消耗品を考える。燃料・食材を考える。
  • 後始末:食事後の後始末、および次回のご飯作成への影響を考える。
  • その他の事柄:山でご飯のテーマとか。

エネルギー補給としてのご飯

消費カロリーと摂取カロリーのバランスを考えて、十分なカロリー補給ができること。ご飯の楽しみとカロリー摂取の重要度のバランスをとることが重要。ぶっちゃけると、短期間なら行動食のお菓子だけ食べてても死にはしないので、「山でご飯」にどれだけの価値を見いだせるかによる。

カロリー消費計算概要

装備を背負って山中を1時間行動で500kcal消費が目安。運動強度が高いとグリコーゲン(炭水化物)が多量に消費されるため、無理な行動さけて終始息が上がらない楽な運動強度を保つこと。体に備蓄した脂肪を多く使って行動するのがコツ。運動強度を上げすぎないよう上手に行動すれば消費500kcalのうちグリコーゲンの消耗は250kcal程度になるため、行動時間×250kcal分のカロリーを炭水化物で摂取すればOK。体重や装備の重さを考慮して多少色を付けるのもあり。また、短期の山行であれば多少欠乏気味でも問題ない。

運動強度管理は、主観的運動強度で十分だが、よくわからない、もしくは本格的に管理を行うなら心拍計を使ってもいい。心拍計と主観運動強度の相関がつかめれば、以後心拍計は不要になる。

  • カロリー計算:朝ご飯と晩御飯の合計で250kcal×行動時間をおもに炭水化物で摂る

なお一日のトータル摂取カロリーとしては、基礎代謝量で1500kcal程度あるので、それを考慮して食事を摂ること。昼の行動食で底上げする分で賄なうといい。

ご飯に作成にかかる資源

食材はなるべく軽く、高カロリーが望ましい。また日持ちしないものから消費すること。嗜好を優先するか、重さを優先するか、バランスをとることが重要。

燃料は、一回の調理に必要な消費量を把握していることが重要。部屋で試作する際に燃料消費量をチェックしておくこと、山では気温・気圧の低さ、何より風の影響で燃料消費は1~2倍程度ばらつくことに注意。

ご飯毎に厳密に燃料消費を把握できない場合は、自分の山行時について過去実績を把握しておくとよい。自分の場合は、1食あたりガス50g、ガソリン0.1l程度で算出している。安全係数として1.5掛けで持っていくことが多い。

アルコールストーブは風など環境の影響が大きすぎて正確に見積もることが困難。ストームクッカーなど使用している場合は、環境変化に強くなるのである程度の目安が立てられると思う。

  • 燃料消費:一食あたりガス50g、ガソリン0.1l。安全係数として1.5倍した量を持って行く

後始末

食事後の後始末は2つに大別できる。1つは、ゴミの処理、2つ目は汚れたクッカーの始末。

ゴミの処理

そもそも論としてなるべくゴミが出ないようにパッキングと食材を選ぶこと。山で捨てるという選択肢は絶対にない。ゴミは持って帰ること。したがって食べきれない量を作ってはならない。ゴミは、燃えるごみ、燃えないゴミに分けてビニール袋に分別しておくといい。

  • ゴミ処理:まずゴミを出さないことに注力。出てしまったゴミは燃えるごみ、燃えないゴミに分けてパッキングして持ち帰る。山に捨てないこと。

汚れたクッカーの始末

軽度の汚れは、水汚れと油汚れに大別できる。水汚れはお茶やスープを作って汚れを薄めた後、飲んでしまう。油汚れは簡単にふき取っておくだけで、汚れたままにしていい。次回もそのクッカーは油もの担当にする。油もの担当から外したくなったら、そのクッカーでパスタ類を茹でればOK。パスタの煮汁に界面活性作用があるため油汚れが浮き、簡単に掃除できる。なお煮汁はスープにして飲んでしまえばOK。

重度の汚れは、概ね焦げ付きくらい。不覚にも焦げ着きを作ってしまった場合は、二択となる。高山の場合や国立公園など外界からの異物持ち込み厳禁の場合は諦める。汁物作って箸やスプーンで気長につついて落とすしかない。低山で極小の汚れの排出が問題にならない場合は、沢で水と砂をつかって削り落す。汚れは沢から離れた場所に捨てること。無理に落とさず諦めるというのも手。

  • クッカーの掃除:多少の汚れは気にしないのが基本。水溶性の汚れは汁物で薄めて飲み、油溶性ならパスタの出番。焦げ付きは出さないこと。それでもやっちまった場合は、諦めるか、砂をクレンザーにして落とす。

その他の事柄

攻めの冒険でもない限り、食事に効率を求めないほうがいい。あくまで自分が楽しく食べられるものを追い求める方が山が楽しくなる。

山でご飯のテーマ

山頂で月見しながら日本酒のみ、旨い鍋焼きうどんを食うぞ! とか、第三者には意味不明のこだわりのこと。不思議とこの手のこだわりは、類が友を呼ぶ。

自給自足?

山で採って食う技。とは言え、国立公園で摂って食うのは法律で禁止されてる。一方、普通の川や山は誰かのモノなので、これまた勝手に摂って食うのは泥棒。やるなら漁業権とかちゃんと調べて、合法的に摂って食うこと。

まあ普通の山行は自給自足を前提に食糧計画を立てたりしないので、これが必要になるようなことはない。

2009年8月17日月曜日

ビバーク考(番外):ツェルトの張り方 (ストック利用)

ツェルトの張り方について

ストックを利用したツェルトの建て方を記述する。風が強いとき、または風が強くなることが予想されるとき(*1)は、この建て方を選択してはならない。 (建てたツェルトの一例、ここで挙げた方法とはちょっと違うが・・)


(*1)天気予報は風の強さは説明しない。気圧配置および観天望気から予測すること。レンズ雲が見えたら、風が強くなる予兆。

(1)石の収集

両手の握りこぶしを合わせたより多少大きめの石を8つ集める。

(2) グランドシートを敷く



地面をならし、小石や小枝を除く。平らが理想だが、周囲と比べてやや凸面になっている方がよい。凹面だと雨が来ると水のとおり道になるため、死ねる。

(3) ツェルトを置く

グランドシートの上にツェルトを置く。このとき、ツェルトの入り口のファスナーは閉じておくこと。すそは外側に開いた状態にし、集めた石4つで仮設置する。

(4)片側をストックで立てる
ここがキモ。細引きの真ん中にエイトノットでループをつくり、ツェルトと接続する。接続の仕方はここを参照(FinetrackのHP)。ストックのグリップに結んだら、後は細引きの両端に集めておいた石の2つを絡めて(結ぶ必要は無い)、バランスをとりながら自立させる。

ポイントは、ストックのゴムキャップをはずして、石突を地面に突き立てること。グリップを下にする建て方より、安定する。

地面が岩盤やコンクリートで石突が刺さらない場所では、ゴムキャップはつけたままにする。

グリップを下にして、ツェルトのループに石突を引っ掛けて建てる方法もあるが、ストックが、ツェルトに近くなりすぎ、ツェルトに出入りしにくくなるため、不便。またFine trackのツェルトのように、入り口が傾斜しているため、逆さストックでは建てにくいものもある。理由がない限り避けたほうが無難。

(5) 反対側をストックで建てる

同じ要領で反対側も自立させる。石をずらしてピンと張る。ここまでできれば、とりあえずOK。寝れる。後の工程は、天候や気分(?)でやってもいいし、やらなくてもいい。

(6)ツェルトの底を閉じる
仮置きしていた石をどけて、ツェルトの底を紐で閉じる。適当でいい。

(7) グランドシートの裾を折る

ツェルトの底面積より多少小さい程度になるよう、グランドシートを折り返して、ツェルトの底面に差し込む。雨対策なので、雨が来ないと確信しているときはやらなくていい。
グランドシートの裾は出しっぱなしにすると荷物を置いたり、座ったりするときに、汚れにくくなり便利。寝る前に織り込んでも可。

(8) ペグダウン
気が向いたら、ペグダウン。耐風性がそんなに良くなるわけでもないのでやらなくて可。ペグ持つ分、荷物が増えるし、撤収時も面倒。

2009年8月11日火曜日

山でご飯 (1): はじめに

imo

山で食べるご飯について

登山中食うご飯は、なるべく型にとらわれないものを選んだほうが楽しい。ここでは、山で食べるご飯について考察する。

右は、水と酒とさつまいもの晩御飯。

調理器具
  • ストーブ:ガス缶タイプ、イワタニプリムス P153を使用
  • コッフェル:チタンとか、アルミとか沢山ある
  • お箸:SnowPeakの和武器を使用
  • スプーン・フォーク:SnowPeakのワッパー武器を使用
  • ナイフ:Opinel No8を使用
遊び道具
  • ペプシ缶バーナー:自作アルコールストーブ (空き缶、ナイフとピンで作製)

常備調味料

  • マヨネーズ
  • ふりかけ
レシピ(定番モノ)
  • 圧縮パン
  • パスタ+スープ
  • ラーメン(含むカップ麺)

レシピ(お遊びモノ)

  • 焼き芋
  • 焼き魚
  • 焼きプリン
  • チーズフォンデュ
  • ホイル焼き
  • 鍋焼きうどん(失敗)
基本的な考え方

手持ちのコッフェル・バーナーで作れることが大前提。手早く作れることも重要。何よりガスの消費量を減らせる。コッフェルの掃除が楽であることも必要。これらの要素を満たしているものなら、どんなものでもよい。

長期の縦走などではパッキングの効率がよく、軽いことも重要になる。またゴミがあまり出ないようなものがよい。

山でご飯を成功させるコツ

ぶっつけ本番禁止。環境の整った部屋で試作し、風の影響で火力が出ない場合など考慮してメニューを決定する。

ただし、失敗も楽しむ遊びなら、むしろぶっつけ本番推奨。

2009年5月17日日曜日

ビバーク考(5):たき火

たき火について


ビバークにおいて、たき火は必須ではない。ほとんどの場合、手持ちのストーブで事足りる。

不時露営(フォーストビバーク)を強いられるケースで、たき火が必要になる。たき火はコントロールが難しく、ぶっつけ本番で試みるとたいてい失敗する。

右は、安定した熾火の状態。

焚き火の3原則+1

一言で言えば、薪・空気・熱をコントロールすること。またビバーク特有の注意が1点ある。

ビバーク特有の注意

焚き火の場所に注意。可燃物の近く(落ち葉の溜まり場・倒木の陰など)はNG。また火の粉で装備に穴が開くのでツェルトの側も避ける

手早く集めるには、3-5m程度の大きな枝を数本拾い集める。薪に適した長さの枝を選んで拾っていたら日が暮れてしまう。段差に立てかけてキックすれば折れる程度の太さの大枝を選んで引きずってくること。

空気

炎が燃えるために必要なもの。薪の組み方に依存する。失敗しにくい簡単な方法は以下のとおり。

  • 浅い穴を掘る

  • 拾ってきた大枝から細い枝を毟り取って穴に敷き詰める

  • もっとも太い薪を2本から3本程度並行に並べる

  • 間に枯葉や細い枝を盛る

  • その上に適当な太さの枝を適当にくみ上げる

焚き火の肝。焚き火が立ち消えするのは、酸欠もしくは燃焼を維持できるだけの熱量がなくなってしまうことによる。よほど密に薪を押し固めないと通常は酸欠は発生しないため、焚き火の立ち消え原因はほとんどは、燃焼が継続できる熱量を維持できないことによる。

熱量の維持は以下の点に注意する。

  • 灰を使い地面と焚き火の間を断熱する。浅い穴に小枝を敷き詰め早い段階で灰にして火床を作成する

  • 太い薪が加熱され、可燃性のウッドガスが噴出している状態(炎が激しく出ている状態)は不安定。冷えてガスの噴出がとまると数秒で消える。太めの枝は2本以上同時に燃えるように維持し、燃焼面を対面に配置し互いの熱で炙りあうように維持すること

  • 太い薪の燃焼面が炭化し熾火が灰に溜まり出したら、焚き火は安定期。熾き火を囲むように枝を端から徐々に投入していけば、わずかな薪で長時間小さい炎が維持できる。


焚き火装備

遭難のニュースを見ると、たまに道迷いの遭難者が焚き付けがうまくいかず、地図を燃やしたりしている。道に迷っている最中に地図を燃やすなんて正気の沙汰ではないのだが、暖をとるために焚き火を熾したいが、焚き付けがうまくいかず、適当な可燃物が無く地図を仕方なく燃やすという状況は想像に難くない。

そういった事態にならないよう、普段から火を熾し暖を取れる装備とスキルを用意しておくこと。

  • マッチ:濡れによわく炊き付けしにくいため通常不要
  • ライター:主力品。ガスがなくなるとつかなくなる点に注意
  • ストーブ:自動着火装置がついているなら火熾しに使える。が、コレがあるときは燃料さえ心配なければ焚き火は必要ない。
  • メタルマッチ:マグネシウムの塊。濡れていても火を熾せるため非常用装備として常に携帯。ティッシュペーパなどの燃えやすいものが無いと火を熾すのが難しい。着火を練習しておかないと、いざという時まったく使い物にならない。
  • ガムテープ:着火剤として流用できる。火熾し以外にも破れなどの補修にも使えるため優秀な装備
  • メタ:固形燃料。土砂降りでなければ雨の中でさえ燃える。タブレットを2、3本携帯するだけで火熾しの失敗はほぼ皆無になる。
  • ガソリン:爆発的に燃える。コントロール不能になるため通常使用禁止
  • アルコール:着火が非常に簡単。ただしアルコールの炎は昼間は透明で見えないため取り扱いが難しい。

法律上の問題

焚き火に関する法律は、以下のとおり。

自然公園法

国立公園・国定公園の特別保護地区では焚き火は禁止されている。特別保護地区は、地方環境事務所のwebサイトから目的の地域のページを開き「管内の国立公園」のリンクから目的の地域の地図をダウンロードして調べること。また、生命の危機に瀕するなどして、やむを得ず焚き火をした場合は、届け出が必要。

消防法・廃棄物処理法

火災を起こさない・ごみを燃やさないことに注意すればいい。イベントなどで、あらかじめ焚き火が必要なことがわかっている場合は、消防にあらかじめ断りを入れておく。最も重要なことは必要も無いのに焚き火をしないこと

心得

  • 焚き火可の場所でやる。焚き火可かどうかわからない場合は、自分の命が危険かどうかで判断する。
  • 小さい炎を長時間もやせる人ほどエライ
  • 土をかけるだけですぐ消せて、跡形も残さないのが理想

自分は逃亡者で、追跡者の目から逃れて火を焚いているとイメージしてやる。究極的には焚き火を必要としない装備をもっているのが理想。しかし、装備が無ければ死んでしまうようではだめ。焚き火に関する知識やスキルを身につけておくことが必要

2009年5月9日土曜日

ビバーク考(4):凍死について

凍死について

気温の低さで死ぬのではなく、自律による体温維持が不可能なため結果的に死ぬ点に注目すること。条件さえそろえば夏の夜でも凍死する。(疲労凍死)

右は、11月の山中でビバーク中に凍り始めたザック。カバーに霜が発達してきている。


基本的な考え方

生産熱量≧損失熱量を保てば死なない。

生産熱量

体温を維持するため自律神経が制御している人体の発熱量。体内温度を37度に維持している。筋肉や内臓が生産する熱量は、食事に含まれるカロリーから作りだされる。したがって食べて・蓄えてきたカロリー以上に熱は生産できない。

短期間の登山で、脂肪および蛋白質の欠乏はないため、基本的に糖類(炭水化物)があれば生産熱量は維持できる。しかしながら可能な限り、糖質、タンパク質、脂質をバランスよく、かつ十分量を摂ることが望ましい。

  • 凍死しないためのその1. しっかり食事をとる。

昼の行動で、グリコーゲン(これは糖質が原料)を大量に消耗していると、体内の糖質が欠乏し熱生産に影響する。

損失熱量

損失熱量は環境に依存する。おもに放射、対流、伝導、蒸発によって熱が体外に奪われる。

放射は、熱が赤外線などの電磁波となって放出される現象。サバイバルシートや銀マットなど赤外線を反射する物体で体を囲うとよいが、この手の装備は透湿性がないため、条件によっては蒸れたり結露で濡れたりする点に注意。室内安静時24度付近では、体表からの放射熱は60~80kcal/h程度。

対流は、風や流水によって熱を奪われる現象。着れるものは全部着て、風に当たらないところに逃げ込むことが重要。流水に触れるのは論外。恐ろしい速度で熱を奪われる。したがって雨に当たってはならない。

伝導は、温度の高いところから低いところへ熱が移動し平衡する現象。地面は人体と比較すると無限に近い熱容量を持っているため、地面に触れていると熱を奪われる。地面に対しての断熱を考えることが必要。マットやザックをお尻や背中にひくなどして、地面に対する熱抵抗の増大をはかること。

蒸発は、体表面から水分が気化する際に熱を奪われる現象。人間の体からは常に蒸気がでているため、防ぎようがない。ただし体表面が濡れている状態(雨に当たってずぶ濡れなど)は、水分の蒸発に体温を使ってしまうため、避けること。乾いた服に着替えることが重要。

  • 凍死しないためのその2. 生産熱量を失わない努力をする。「濡れ厳禁」「着こむ」「冷たいものに触れない」

服を濡らしてしまった時点で、行動は失敗と判定すること。

生産熱量と損失熱量の判断基準

シバリング(震え)の発生を基準とする。シバリングは体温の低下に対抗するため、自律神経が筋肉を動かす(つまり震える)ことにより熱を生産する生理現象。体内温度が0.5度程度低下すると発生し始める。

シバリングの発生は、生産熱量より損失熱量が大きく体温を維持できる限界を超えていることを意味している。(生産熱量<損失熱量)。継続的なシバリングは、約2時間が限界。それを超えるとシバリングは消失し、骨格筋の運動による体温上昇はなくなり、熱生産量が減少。やがて体温の維持が困難になる。低体温症で済むか、死に至るかは状況による。

シバリング消失の頃には低体温が進行し正常な判断能力を失う。したがって、シバリングを感知したら、ただちに対策を行うこと。防寒の状態が考えうる最高の状態である場合は、ストーブによって暖を取らなければならない。その際、ツェルトなどで外気と遮断されていると空気が暖まりやすく暖を取りやすい。

  • 凍死しないためのその3.震えに耐えて我慢はダメ。シバリングで体温を維持できる限界は2時間。その間に対策すること。火が使えるなら、ただちに暖をとれ。

寒いからと言って火をつけたまま寝ない。火事・窒息の危険がある。水の量が十分である場合は、湯を沸かし、少しのみ、残りはペットボトルなどに入れて湯たんぽにするとよい。

疲労凍死について

ビバークのセオリーを守り、疲れる前に休むこと。雨や雪の中、ちょっと我慢して行動すれば人里や山小屋に着く、という状況に注意。想定外の事象や1ミスで疲労から行動不能に陥る。そして体温維持困難から凍死へとつながる。「我慢して行動」という時点で、計画、装備、行動のいずれかに既にミスがある。

ツェルトを被ってお茶を飲んで休憩しつつ、仕切り直しの方法を考える。事故さえ起こさなければ、水・食糧・防寒が揃っていれば死なない。

2009年5月7日木曜日

ビバーク考(3):ツェルト


ツェルトについて

登山するなら、たとえ日帰りでも持つべき装備がツェルト。

右の写真は、ストック、細引き、石で立てたFinetrackのツェルトI。この時は、雨を警戒してナイロンシートをグランドシートとして使っている。

ストックを使ったツェルトの建て方はここを参照。

所持ツェルト

所持しているツェルトは2つ。

  • mont-bell ULツェルト
    最初に購入したツェルト。登山を始める前MTBで森をさまようのにお守りとして購入。自転車用としては、一度だけ使用。のちに登山を始めてから、積極的に使用しはじめた。現在のサブ装備。
  • finetrack ツェルトI
    2番目に購入したツェルト。ULツェルトの結露に堪えかねて購入。軽さと透湿性を期待して選んだ。現在のメイン装備。

ツェルトとはどんな装備か

底割れのフレームなしテント。通常シングルウォール。軽く携帯性に優れるが、ダブルウォールの山岳テントに比べ、浸水しやすい、結露しやすい、風に弱いなど多くの欠点をもつ。

非常用装備としてザックの底に忍ばせておくように、というアドバイスを単純に受けとめないように。ツェルトは経験がモノをいう装備なので、非常時になってから、初めて取り出したのでは使いこなせない。

ツェルトのパッキング

だれに習ったわけでもないため、著しく我流である点に注意。

  1. ザックのてっぺんに装備すること
    ツェルトはザックの底にしまうと、山行中に取り出されることはなくなる。ツェルトはザックの底ではなく、天辺の雨蓋に入れるべき。

  2. スタッフバックから出して、大きめのビニール袋に入れること
    スタッフバックに入れていると、さっと取り出しさっと仕舞う事が出来ない。ビニール袋やごみ袋に詰めて雨蓋に押し込め。

上記1.2.の理由は、単純で、寒冷地での休憩や突然の雨にツェルトを積極的に使うため。チェックポイントは以下の通り。

  • 手袋をしたままでツェルトを取り出し、かぶり、また収納できるか?
  • 雨が降り出した。ツェルトを取り出し、かぶるまで10秒以下で対応できるか?
  • 泥がついていたり、雨でぬれたツェルトを収納して、他の装備に影響はでないか?

ツェルトで寝床を作る

寝床としてツェルトを使うには、童心に返るのがコツ。子供の頃、秘密基地を作って遊んだことを思い出しながら、ツェルトは秘密基地の材料と考えてみるとよい。如何に快適に中で過ごすかを地形に合わせて工夫する。

ポイントは以下の通り。

  • 風や雨が吹き込まないように立地や建て方を考える
  • 窪地や崖下、沢沿いはNG。増水、落石で死ねる
  • 細引きは10mを2本位持っていれば、たいていの場所で三角形に張れる
  • ペグはいらない。落ちてる枝や石でペグダウンの代わりにできる
  • ストックでのツェルト自立は、テクニックが必要。慣れれば無風時なら簡単に建てられる

ビバーク装備としてのツェルト

  • ツェルトは消耗品と考えて大胆に使う。自分の命を大事に
  • たとえ透湿性があっても、結露は避けられないと考えて使う
  • 内部での火器使用は可能な限り避ける(風で煽られたツェルトに引火しかねない)
  • 強風時は無理に自立を試みない。ツェルトは絶対に風で吹き飛ばされてはならない

ツェルトに対する個人的感想

いろんなメーカから様々なツェルトが出ているが、ツェルトを使って野で遊ぶならfinetrackのツェルトIをがいい。透湿性を持っているため結露が少なく、軽く、ベンチレータがつぶれにくいため窒息を恐れなくていい、さらにモスキートネットも装備しているため虫の侵入も多少はマシ、と至れり尽くせり。

mont-bellのULツェルトは軽いが結露が半端じゃない。朝、外は晴れてるのにツェルトの中は雨といった風情になりうる。ゴアツェルトは高い&重すぎるため論外。あれを持つくらいなら超軽量のダブルウォールテントを担いだ方がマシ。

非常用でいいや、というのであればどこのメーカのツェルトを選んでもいい。ただし、非常時になる前に予行演習としてビバークにチャレンジしておくべき。

以下、ツェルトを選ぶときのチェックポイント

  • 底が割れてる、かつ底を閉じられる
  • 軽い
  • 濡れた時ベンチレータが潰れない(かなり重要!)
  • モスキートネットは趣味。モスキートネット無しのモデルを買うならベンチレータから顔が出せること

2009年5月4日月曜日

ビバーク考(2):結露について

夜間に結露したツェルト内部。気温不明。外は霧雨

結露について

夜間、山にいると常に付きまとう問題が結露の発生。忘れてはならないことは、たとえ透湿性をもつ素材でも条件しだいで容易に結露するという点だ。

右は、finetrackの透湿性を持つツェルトに発生した結露。

結露考

結露は、温かい蒸気が冷やされ凝結することにより発生する。したがって結露を減らすためには、

  • 水蒸気量を減らす
  • 温度差をなくす

の2点に絞られる。

  1. 水蒸気量を減らす
    煮炊きを避ける。暑すぎる装備で寝ない。ただし、人間の体から発散される不感蒸泄は抑えられない。換気によって水蒸気を外部に排出することで水蒸気量を減らせる。
  2. 温度差をなくす
    積極的な換気を行う。

ツェルト内部など結露発生部位で換気を頻繁に行う事により、結露はかなり防止できる。しかしながら、換気は次の点で良い解決策とは言えない。

  1. ツェルトなどシェルター内の熱を逃がす
    盛夏を除き熱は逃がさないほうがよい
  2. 衣服やシュラフの内部結露の発生
    ダウンシュラフを湿らせたり、最悪濡らしてしまう。

ツェルト内部の気温を下げすぎると、上記2.の内部結露が発生する点に注意。シュラフ表面と内部に急な温度勾配が発生すると、体から出た蒸気はダウン表面やシュラフカバー内側に結露する。



これはツェルトなしでシュラフカバーのみでビバークした場合も該当する。 ゴアテックスなどの高性能透湿素材でも同様に結露する。ゴアテックスが透過するのは水蒸気のみであり、シュラフ表面に近いダウンの温度が下がってカバー内で結露した場合は、ゴアテックスメンブレンの透湿性は真価を発揮できない。

結露のコントロール

2通りある。

  1. 湿度のたまる層をなくす方法夏山で気温が十分高く、降雨の心配がない場合は換気を十分にするとともに、湿度を逃がしにくいシュラフカバーの使用をやめる。
  2. 結露場所をあらかじめ設定し、濡らしてはならない装備を守る方法シュラフカバーの外側に結露させる層を作成する。

経験的に1は判断が難しく、2の方法の方が簡単だが、暑くて寝苦しい思いをする場合もあり、結局温度調節がいる。

たいていのビバークでは上記2をメインにし、暑ければ上半身をシュラフから出して寝ている。

失敗談

1500m近辺、8月にマット、ダウンシュラフ、ゴアテックスシュラフカバーのみでビバーク。満天の星空に流星がながれていて、うるさい羽虫を除けば最高の夜だった。

入眠も適温で極めて快適だったが、翌朝は寒くて起床。ダウンシュラフの背中から側面にかけて結露でビショビショに濡れてロフトが消失していた。原因は以下の3点が考えらた。

  1. シュラフカバーは、換気が悪く、透湿能力を超えると蒸気が溜まってしまう
  2. シュラフ表面の温度が下がりすぎてカバー内部で結露した
  3. 結露個所は、ゴアテックスの透湿性が失われるため、一旦、カバー内側で結露が発生するとカバー内部の湿度は上昇しやすくなり、さらに結露を生むという悪循環に陥った

この場合は、カバー無しで寝る方が良かったと思う。

2009年5月2日土曜日

ビバーク考(1):ビバーク判断について


体力の温存

無理な行動はしない。体力の消耗は急速だが、回復は遅い。疲れれば疲れるほど、回復には時間がかかる。基本は疲れを感じる前に即休む。普段より疲れを感じたら判断ミスがあったとし、原因を解明すること。

必ず余裕がある段階でビバークに入ること。

ビバーク判断基準

日没

あらかじめ夜間移動を想定していないときは、どんなに遅くとも日没2時間前までに移動を停止すること。午後3時には、ビバーク地を探し始める。

時計がない場合、および稜線に囲まれその地点の日没時間がわからない場合は、指の幅で日没までの時間を予測する。両手目いっぱい伸ばした状態で手のひらを太陽に向け、稜線と太陽下部の間に親指を除く8本の指が入ると、およそ日没2時間前となる。(指一本が約15分だと覚えておけばよい)

天候

悪天の場合は無理に行動しない。

体力

疲れを感じたら即休む。

2009年4月29日水曜日

初めての道迷い



初めての道迷いを経験した。ここではその顛末を記す。

概要および起こった事実

右図は、鳳凰三山の一つ、観音ヶ岳頂上付近の25000分の1地形図である。地図上の赤いラインは歩いた軌跡を示すGPSログである。図中の中央北寄り2800m付近で一度コースを外れ、また戻ってきているのがわかる。

移動方向は、南から北(図では下から上)であり、頂上からの下りで道を間違えたことがわかる。正しいルートは尾根沿いであるため、道迷い後すぐにルートを外したことに気付き、尾根への復帰を試みているが、岩とハイマツで移動困難だったため、突破をあきらめ、もと来た道を登り返している。

なぜ道迷いは起こったか?

道迷いに至る原因について段階的に考察した。

  1. [なぜ道迷いを起こしたか?] →
    下りルートの選択を誤った

  2. [なぜ下りルートの選択を誤ったのか?] →
    ルートを示す赤ペンキの道標解釈を誤った

  3. [なぜ赤ペンキの道標解釈を誤ったのか?] →
    道標を見ている自分の位置・ルートが正しいという思い込み

  4. [なぜ自分の位置・ルートが正しいと思いこんだのか?] →
    地形図と周囲景色に矛盾がなかったため

  5. [なぜ地形図と周囲景色に矛盾がなかったのか?] →
    なだらかなザレ場をはしるトレースが近傍に複数あり、正しいトレースをたどってなかったとしても25000分の1スケールでは判断不能。また下りコースに入ると岩と低い灌木で見通しが悪かった。


道間違いの直接原因

道迷いの現場のイメージは以下の通り。青のラインをたどるべきところで、赤のラインをたどり道を間違えた。


赤のラインに沿って歩いて行くと、行く手に倒木が横たえられており、その上に赤ペンキでバツ印が入れられているのが見える。この印はほぼ真上を向いていた。

地蔵ヶ岳に至る正しいコース(青のライン)から見ると、このバツ印は間違ったコースに侵入させない目印の役割を果たす。しかし、反対側(赤のライン)からみると、このバツ印は間違ったコース上にいるものを正しいコースに復帰させないという害をもたらしている。

道迷いに何時気づいたか?

30m程度降下後、進行方向が谷地形、左手に尾根が見え始めたためルートを外したことに気付いた。

道迷いに対する対応

尾根へ直登を試みたが「登れる、かつ、降りれる場所しか行かない」というルールに触れたため、セオリーに従い頂上へ戻ることを選択した。

再発防止

赤ペンキのマル印やバツ印を見つけたら、それをどの方向から見るべきか検討してからルートを選択すること。マル印やバツ印を超えて侵入し、振り返って地形図・コンパスと照合・確認すること。