2008年7月17日木曜日

登山計画:水

コンディション維持の基本

体調は好調を維持すること。健康状態が良い時ほど回復力が大きい点を利用する。大きく疲れてから長く休むより、ちょっと疲れたらちょっと休むを繰り返すほうが疲れない。

水分を計画する

よく言われる目標摂取量は、「体重×5ml×行動時間」。しかし、これはあくまで参考値。山に行くときに持っていく水の量は以下の点を考慮して決める。
  • 補給(水場)間隔
    山中の水場による水の補給が受けられない最長区間を抽出する。補給を受けられない区間が長いほど担がなければならない水の量は増加する。
  • 発汗量
    その季節・装備・運動量から発汗量を予測する。逆に発汗量を抑える工夫をすれば担がなければいけない水の量は減少する。
  • 非常食
    非常事態で行動不能や停滞が発生した際に使用するバックアップの水分。何日分用意するかにより固定的に発生する。遭難時の脱出計画を立ててからよういすること。
採用している水の運搬方法
  • プラティパス(ぺしゃんこ水筒)
    主力の運搬方法。不要の際に小さくたためる点が良い
  • テルモス
    温度保持が必要な場合。かさ張り運搬量が少ないが、適切に使用すると大変便利。
  • ペットボトル+フック
    ベルトに下げるペットボトル。手軽に取り出して飲めるようにしておくことがコツ。こまめな水分補給に。
  • 体内に保持
    飲みだめておく方法。行動前夜にたっぷり。もしくは行動前に手のひら一杯分くらいを飲む方法。行動開始時点で水分保持量が足りてないと、山の中での水分補給量を多く取らねばならずデメリットしかない。

使わない運搬方法

  • ハイドレーションシステム
    プラティパスとホース、専用の飲み口、ハイドレーション対応ザックを使ったシステム。行動しながら水分を適宜補給できる。水場での補給を考慮しないなら大変便利。だが、水がゴム臭くなる、水場での補給が煩雑などデメリットが大きい。

概算方法

山中行動2時間で500mlのペットボトル一本を空けるとして計算。バックアップ水分量は1L/1日で計算。これに調理に必要な水分量の運搬を加味して算出する。

あまり余裕をもって算出すると装備が水で重くなるため、通常時は体調を好調に維持するために必要な量を十分に、非常時向けは死なないで帰ってくるために必要最低と思われる量を用意すること。脱出が容易なら、一泊のビバークで楽しむお茶分を持っていればとりあえずOK。

補給方法

行動中に、一口ゴクリと飲む飲み方で頻繁に。口を湿らせるイメージでケチくさくのむと疲れにくい。水場などでたっぷり飲める時も控えめに回数を分けて飲む。ごくごくたくさん飲んだ後は、胃液が薄まっているので消化の悪い行動食などは胃が落ち着くまで控える。

節水

やみくもに水分摂取量を減らさず、体を冷却するための発汗量を抑えることに着目すること。

直射日光を避けることができる。水分保持量が少なくすぐ乾く。風通しが良い。以上が水分を節約するための服装。

また、夜・早朝に行動し日中は風通しのよい木陰や岩の影などに隠れて涼むのも有効。

運動強度を低く抑えて発汗を減らす。

2008年7月14日月曜日

行動基準・方法

戻れるトコしか行かない

難所を登ったり降りたりする前に一呼吸入れて考える。ここを降りたら上り返せるか? ここを登ったら今の装備で降りられるか? 無理なら撤退する。

現在地の特定と移動


必要な装備品。

  • 地図
    25000分の1地形図。現在位置の確認とこれから進む地形の予測に必要。予測が外れた場合、停止し検討。
  • コンパス
    進行方向のチェック。2つ携帯。停止時の詳細検討用のSilvaコンパス。大まかな進行方向チェックはProTrekの内蔵電子コンパスを使用。
  • 高度計
    登山道が明確かつ正確でOnRouteで移動中、かなり正確な位置が絞り込める。ProTrek内蔵の高度計を使用。
  • GPS
    目標物までの距離と方角を出せること。移動したトラックを記録できること。充電式ではなく乾電池で作動することが購入条件。ForeTrek101を使用。

行動パターン

  • 登山口に到着
    GPSをONに。後から方角と直線距離を計測できるように登山口の位置を記録。

    地図より等高線を読み取り、気圧高度計を調整。地図上の等高線と高度計の表示が一致していることを確認。

    地図から山に入るルートを読み、歩く地形を簡単にイメージして叩き込む。たとえば南東斜面を基本的に西進、右手が山頂方向、横切る沢なし、750m移動で尾根。尾根に出たら進路は北東へ。など。

  • 行動中(自信あり)
    イメージした地形と照らし合わせながら移動。自信を持って現在地を指し示せる位置をつないでいく。

  • 行動中(自信なし)
    冒頭の行動指針を守る限り何度でもやり直せる。水、食糧、防寒がそろっていれば、あとは事故らないだけで必ず帰れる。心を落ち着けたら、イメージと違う地形が現れたことを考察する。「単に地形図に現れないだけ」もしくは「道を間違えた」の二通りしかないため、それぞれを吟味する。

    地形図に現れないだけ

    樹林帯では割とよくある。自分がいると推測している場所の特徴を検討し、このまま進んだらどこに出るか考える。地形図から「次に場所が特定できる」特徴がある位置への距離と方角を考えて「撤退基準」を決める。

    (例)踏み跡がなくなったため自信を失った。もし、道を外していなければ高度計にしてあと50m下れば斜面の傾斜が緩くなり左手に沢があるはず。斜面が登り返せない、もしくは、これ以上予想と違う地形が現れるようなら撤退する。

    道を間違えた

    地形図で今までたどってきた進路を検討する。自信を持って「ここは歩いた」と断言できる場所から、今現在自分がいるはずなのにイメージと違う地形が現れた場所までの歩行可能な尾根、斜面、時間を検討し、間違える可能性をつぶしていく。「ここは間違えたかもしれない」という場所にチェックを入れて可能性のある全ルートを再チェックする。確実に自信を持っていた場所まで「撤退計画」をメモする。

    (例)鷹ノ巣から城山までのルートは迷いようがない。左手が尾根で斜面を降りてきた。撤退するときは右手に尾根をおいて登り返せばいい。

  • ピークや特徴のある地形
    地形図から等高線を読みとり高度計の高度を調整する。水場やピークなどはGPSに場所をマークする。見通せる目標物がある場合は、同定を行っておく。

現在地特定のコツ

尾根伝いなどルートが明確かつ高度差がある場所は高度計を積極的に使う。等高線が1mm間隔程度の場所なら±50m以下の精度で場所が特定できる。

逆に高度差があまりない場所は時計とコンパスを使う。見通しのいい場所ならクロスベアリングなどで目標物から位置を割り出す。見通しの悪い場所なら移動方向、斜面の方角と移動時間から大まかな位置を割り出せる。目標物を持たないまま、広い場所を歩かない。目標物がないならコンパスと時計を逐次チェックする。

樹林帯でアップダウンが激しく道がない場合は高度計、コンパス、地形図をフル活用して歩く。地形に特徴が少ない場合、迷う可能性もある。完全によまったらGPSを使うか、高度を上げて場所を絞り込むこと。(迷うこと自体を楽しめるとよい。こういう場所は歩いているとドキドキする。明るい広葉樹林で天気が良いと最高に楽しい。)

こころのおまもり

GPSを使って目標物までの距離と方角を表示させる。登山口までの距離と方角がわかると現在地に多少自信がなくても、ものすごく安心する。GPSはコンパスに比べて故障や電池切れの心配があるため絶対にメインのナビ道具にしてはいけない。通常は移動ルートのLoggerであり、万一のときのお守りとしておくこと。